「それ……?」
私がぽつりとつぶやくと、彼はその汚れた缶箱を手に持ち、立ち上がった。
ところどころ赤く錆び、土の汚れがついている。
ちょうど、おばあちゃんが時々家に持ってくる、お煎餅がたくさん入っているスチールの缶箱と同じくらいの大きさだ。
その缶箱の蓋の上には汚い字で、なにか文字のようなものが書かれていた。
錆びと汚れのせいでハッキリと読むことはできないが、なんとなく、見覚えがある。
「……これ、覚えてない?」
尋ねられて思い浮かぶことは、ひとつだった。
──タイムカプセル。
それは十年前、私と、当時この団地に住んでいた幼馴染と埋めた、あの友情のタイムカプセルだ。