「よかった! 間違ってたら、どうしようかと思った!」


想像以上にその笑顔がかわいくて、つい、言葉を呑み込んだ。

……なに、この人。男の子なのに笑顔がかわいいとか、反則じゃない?

胸を撫で下ろす彼の手には、この辺りでは手土産に定番の、お煎餅屋さんの紙袋がぶら下がっていた。

もしかして、お父さんかお母さんの知り合いの子供だろうか。

それで、うちにおつかいでも頼まれて、ここで待っていたとか?


「あの……すみません。もしかして、うちになにかご用ですか?」


とりあえず思ったことを尋ねてみると、彼はハッとした後、唇を結んだ。

そうして一瞬だけ視線をさまよわせ、なにかを決意したように紙袋を地面に置いてからしゃがみこむ。

……なに? まさか、ここで手土産を渡す気なの?

けれど彼が紙袋の中から取り出したのは、私の予想に反して薄汚れた、ボロボロの缶箱だった。

それは手土産でもなんでもない。

こんなものを渡したら、ただの嫌がらせになってしまうだろう。