ただ、数秒。

互いの瞳にそれぞれを映し出す。


いったい彼の潤いに満ちた黒に、私はどういう風に映っているのだろう。


すれ違った刹那、ふわり、と彼の香りが鼻をくすぐった。



「それでさー、って美空、聞いてる?」



莉奈の声で、魔法が解ける。



「あ、うん。ごめんごめん。聞いてるよ」

「それでね、翔也ったらさー……」