「まだ、何も出てこないね・・・」

「だなー」


なんて呑気な彼に比べて私はビビリながら一歩一歩進む。出口のほうから先に入った莉奈の悲鳴が聞こえ思わず足が止まった。


「大丈夫?」

「う、うん・・・」



お化けに遭遇してないのにビビる私。きっと日向君も呆れてるに違いない。


「行ける?」

「うん・・・。大丈夫」



そう言って歩き出すと、右手が温かい大きな手に包まれた。



「ぇ・・・」

「嫌だったら言って」



やっと暗闇に慣れた瞳に映る彼はこちらを見ようとしない。そして空いてる手で少しだけぶっきらぼうに自分の髪の毛をクシャり、触った。



私は答える代わりに、その大きな手をギュッと握り返した。



暗くてよかった、なんて初めて思ったかもしれない。


だって暗くなかったらきっと、私の顔は今、林檎みたいに真っ赤でバレてしまうから。