静まり返るそこ。

心の準備が追いつかない。





――――ねえ、行かなきゃだめなの?

――――ねえ、まだここにいたいよ。







思えば思うほど涙が溢れ出る。

もう一度、背を向けた校舎を振り返り見る。4人も釣られてもう一度振り返った。


強い風が、吹いた。

まるで前を向け、と言わんばかりの追い風。


「…」



『がんばれ、私っ!』


どこからか、自分の声が聞こえた気がした。

それはあの日――――屋上で見ていた花火に願った声――――。


「……」



私達が作り上げた青春の轍(ワダチ)。

どうか消えないで、私達の道しるべ――。





「それじゃあ、行くぞ」



日向君の言葉に5人の結ぶ手に、力が入る。





思い出の校舎に、

着慣れた制服に、

大好きな仲間に、






あの日の私たちに、


別れを告げて。





―――――大丈夫だよ。

―――――いってらっしゃい。






「せーのっ・・・!」







青春の日々が、5人の背中をそっと押した。