中に入ればそこには、綺麗に並べられた机たちが。窓を開ければ、優しい風にカーテンがゆらゆらと踊り始める。





確かにここにいたの。


この教室で、この学校で。


同じ場所で、同じ時を過ごしたの。


でも、今ではもう遠すぎて。


君との思い出を振り返るたびに“もう戻れないんだよ”って。


そうどこからか聞こえてくる気がした。



「・・・」


30分。それでも待って来なかったら、諦めて帰ろう。

そして、この恋に終止符を打とう。




莉奈の言葉を。

葉月君の言葉を。


無駄にはしたくなかった。だから、最後は自分の気持ちを正直に伝えたかったんだ。


そっと目を瞑れば、今までの思い出が色鮮やかに思い出されていく。


廊下からスリッパの音がパタパタと一定の間隔で聞こえてくる。少しだけドキドキしながら、その扉が開くのを待つ。




そして――――――扉が、開いた。