「失礼しま、す」
そう言って扉を開けると、全身を冷気が包み込む。やっぱり職員室の涼しさは格別だ、なんて思っている暇もない。
・・・・・・日向君だ。
D組の担任の先生と何やら話をしている様子だった。
夏休みなのにどうして、と考えたがすぐにその答えは見つかる。秋から始まるサッカーの予選会に、出ることになっているんだろう。
C組の先生の席はその隣。しかも不在のようだ。仕方ない。机の上に置いて早く帰る事にしよう。
机の上に閉じられたノートパソコンがあったので、その上にそっと記入済みの紙を置く。
「じゃー日向、お前は本当にこれでいいんだな」
「はい」
そんな声が耳に入ってきたが、気にせず帰ろうとすると。
視界に入った“あるもの”。
「・・・」
D組の先生が指差していたもの。それは“プロ”とだけ記入された、日向君の進路希望調査だった。