暑いのに、汗まみれなのに、皆笑ってるんだ。

火傷するって言いながら足を小刻みに上げて。

ホールから飛び出す、透明な生ぬるい水から逃げ回って。

少しだけ頬を赤くしながら皆・・・笑ってる。


5人は、笑ってる。確かに、笑ってたんだ。




「っ、」



ガタン、と音を立てて倒れた椅子。それだけ勢いよく立ち上がってしまったのだろう。



だけど、気がつけばもうそこには誰もいなかった。




「そっか・・・」




私は、前に進みたくないんだ。


大人になんかなりたくないんだ。




広い社会にでて、自分で働いて、自分で責任を負う世界に私達は進まなければならない。




それはもう皆で笑い合えない事を意味する。




文化祭のお化け屋敷も、ふざけあったプール掃除も、秘密の屋上も、熱い体育祭も、負けられない球技大会も、嫌だったマラソン大会も―――。




全部に大切な皆との笑顔がそこにはあった。この校舎で、思い出の時を刻んでた。





だけどもう、過去。

5人で過ごした日々は、過去なんだ。