そんな二人の間に割って入ってきたのは、莉奈の彼氏である平松君。
窓から入り込む風によって、彼の柔らかそうな茶色の髪の毛がふさふさと揺れている。
彼は冷静に、いがみ合う二人を、少しだけ引き離した。
「葉月、さっさと片付け終わらせてこいよ。この後部活あんだから」
「へいへい」
葉月君は、悪戯を怒られた子供のように唇を尖らせ私たちの教室へ戻っていった。
「美空ごめんね。あたし達も戻ろう」
この瞬間を待っていたのだ、私はずっと。
先程からC組の女の子達がこちらをチラチラ見ている上、目の前にはあの日向君がいるのだ。
この息苦しい空間には、もう耐えられそうにない。
「うん!」
莉奈が「じゃあ行こう」と言うと、私は大きく頷いた。
「俺達は片付け終わったことだし、部活行くか」
「……」
「おい、大地?」
「あ、おう……!」
私達が背を向けた後、彼がこちらをずっと見ていたなんて知らずに、私はただただ火照る頬と、加速した心臓を落ち着かせるのに精一杯だった。