モヤモヤした感情が渦巻く。

それにのまれた俺は、抜け出せそうに無い。






「あの、大地先「わりぃ、琴美」



今は、誰かと話す気分ではない。



「はい?」



試合に負けた上、見たくないものを見た俺は、行き場の無い怒りと悔しさを琴美にぶつけてしまいそうだったから。



「このまま赤堀んとこ行ってくる」

「・・・分かりました」





俺はこの時何も見えていなかったんだ。


目の前にあるものを、しっかりと。


真っ暗闇に存在する海のように、確かにそこに存在するのに、そこにないと思ってしまう。


それは、子供じゃないと思っていても、俺はまだ子供だという事を証明するのには充分だった。




琴美と別れ、一人歩き出す。チカチカと点滅する蛍光灯が、嫌に目についた。

それは余計に俺をイライラさせる原因となった。


-日向大地 side end-