チラリ、私より数10cm高い日向君を見上げると視線が交わった。
春の月のような優しい瞳に、私が映っている。
戸惑いながら少しだけ口角を上げるが、絶対不自然だったに違いない。
慌てて視線を床に向ける。
二人の上履きの距離は50cmほどだろうか。
二人の間に気まずい沈黙が流れる。
しかし、相変わらず幼馴染二人組みは口論の真っ最中。
助け舟は当分やってこなそうだ。
何か言わなきゃ。
止まり木を探す蝶のように、言葉を探すけどピッタリの言葉が見当たらない。
何か。何、か……。
「俺、日向大地!」
頭がパンクしそうになる中、突然の自己紹介に俯いていたままの顔をパッと上げた。
そこには太陽のように眩しい笑顔があって、しかもそれは私だけに向けられている。どうすればいいか分からずとり合えず。
「相、川……美空です」
自分の名前を彼同様に言えば、彼はニヒッと無邪気な子供のように表情を崩した。