よく目を凝らさなければ、そこに海があるのかなんて分からないぐらいだ。
相川さんの隣に立つと、ふんわりと石鹸の香りが漂ってきた。おそらく、ホテルのシャンプーとかの匂いだろう。
俺と同じものなのに、人が違うだけでこんなにも違うように感じられるのか。
「今日、楽しかったね」
「うん。とっても楽しかった」
「俺未だに謎なんだけどさ、チンアナゴって可愛いの?」
「可愛いよ!」
間もいれずすかさず『可愛いよ!』という相川さんが、あまりにも面白くて思わず噴出した。
そして「また笑うんだから~!」とちょっと怒ったフリをする相川さんに、ポケットからあるものを取り出してさしだす。
「はい、これ」