少し重い扉を開けて、夜風が頬を撫でた。 ギイッと、小さく音を立てた扉に、柔らかそうな髪の毛を風に躍らせていた背中が振り返る。 「日向君」 優しく俺の名前を呼ぶ声。 その声を、自分だけのものにしたいなんて。 馬鹿だよな、俺も。 「ごめん、お待たせ相川さん」 「ううん。どうしたの?」 昼間はあんなに綺麗で透き通っていた海も、今では暗闇に飲み込まれていた。