高い声に、急いで笑顔の仮面を貼り付けて振り向いた。そこにはマネージャー室から出て、小走りで駆け寄ってくる琴美の姿が。



「今日のメニューなんですけど、橋本先生が・・・」



そう言ってボールペンで器用に、ノートに文字を落としていく。


葉山琴美とは中学校から同じの後輩。中学校時代も琴美は、サッカー部のマネージャーをしていた。


そんな琴美の持つボロボロのノートには、練習メニューだけじゃない。その日の天候はもちろん、選手の体調についてまで事細かに記されている。



「・・・に変更らしいです。3年の先輩には伝えておきましたので、2年の先輩に伝えてもらっていいですか?」

「おう」

「それから、大地先輩。あっかんべー、の目やってもらっていいですか?」

「もっとマシな言い方しろって。ほら」



そう言って下瞼が見えるように皮膚を引っ張る。

一人変顔、一人それをマジマジ見る後輩。傍から見ればおかしい奴だと思われるだろう。



「んー、やっぱり少し貧血気味ですね。気をつけてください」

「さんきゅ」