「何、悩んでんの?」
平松がこちらを向くのが分かるが、瞳は合わせない。
見つめる一点は、先程から変わらない。
「べっつにー。っていうかその言葉、そっくりそのまま返すわ」
「・・・るせ」
「平松君がご機嫌斜めの時は、大体莉奈ちゃんが絡んでるんですものねー」
「やめろ、気色悪い」
「へいへい」
ユニホームに着替え終わった平松は、スパイクの靴紐を強く結んだ。スマホを取り出し、何かをしている様子だ。
俺は立ち上がり、それをジャージのポケットの奥深くへ。
ちょうどその時。
「うぃーっす」
入ってきた葉月と他の連中に一度だけ目を配る。うっす、と小さく返事をして入れ違いに外へ出た。