呼ばれたその名前に思わずドキッとする。


彼がいることは名前が呼ばれた時点で分かってはいるものの、その名前を呼んだ葉月(ハヅキ)君のいる、教室の後ろのドアに視線をやってしまう。



「よっ、葉月」



そこには笑顔で教室に入って、近くの席に腰を下ろす日向君の姿が。



次第に彼の周りには数人の男子が集まりだした。


……本当、莉奈が言ってた通り“学年の人気者”なんだな。

違うクラスにもかかわらず、すぐに人が集まる。


「で、お前A組に何しに来たんだよ」

「平松が教科書借りに来たから、俺もついでに」

「とかいって俺らに会いたかったんじゃねーの?」



ハハハッとその場に明るい声が響いた。普段から私のクラスは明るいクラスだが、彼がいるだけでこんなにも雰囲気が変わるものなのか。


まるで虹を発見した子供たちのように、無邪気な笑い声が教室の後ろに広がっていった。



「はぁ? んなわけねぇよ」

「照れんなよ大地ー」

「お前らうざいなー。ってか平松遅くね?」



キョロキョロと教室を見回す日向君。そんな様子を無意識のうちにボーッと見ていたようで。





「……―――」



気が付けば、彼と瞳が合っていた。