「え、何」

「お迎え」


そう言って指差す方向には、ドアにもたれ掛かっている翔也の姿が。

少しムスっとした表情に思わず視線を逸らした。


「じゃ、俺自主練行ってくるわ」


え、ちょっと・・・!


じゃあな、と言って荷物を素早く持つと走り去る健人。落ち着く匂いが鼻にかかる。

嫌なくらい静かな空気がこの場に広がる。時計の針の音だけが、小さく響いた。

まるで異世界に迷い込んでしまったかのように、落ち着かない空間に視線を泳がせる。


「・・・」

「・・・」

「帰ろ」

「・・・」

「・・・莉奈」