日曜日の朝、俺はひとまず病院に向かった。
病室では、美乃が診察を受けていた。


「……うん、大丈夫みたいだね。だけど、無理は禁物だからね? 薬も飲み忘れないように気をつけて。じゃあ、今日は楽しんでおいで」

「本当に良かったわね、美乃ちゃん。楽しんできてね!」


菊川先生と内田さんに言われ、彼女が満面の笑みで大きく頷いた。


「よかったな、美乃。これでイルカに会えるぞ!」

「うん! 早く準備しなきゃ!」

「まだ時間はあるだろ?」

「女の子は色々と準備があるのっ!」


ふたりが病室から出ていくと、美乃は慌ただしく準備を始めた。


「美乃ちゃーん!」

「広瀬! 早くないか⁉」

「美乃ちゃんの準備を手伝いに来たのよ! 飛び切り可愛くならなきゃね! はいはい、男は出ていって!」

「えっ? あっ、じゃあ、あとで迎えにくるから」


追い出される羽目になった俺は、苦笑しながら病室を後にした。
それから適応に時間を潰し、約束の時間よりも少し早く病院に行った。


「入るぞ〜」


逸る気持ちを抑えながらノックをしてドアを開けると、ワンピース姿の美乃がいた。
ブラウンのロングブーツを履き、白いカーディガンを着ている。
ワンピースは淡いピンクで、ふとあの時の桜色のリボンを思い出した。


「美乃ちゃん、すっごく可愛いでしょ⁉」

「さっすが俺の妹だな!」


広瀬と信二がニヤニヤしながら、奥から出てきた。
彼女に見入っていた俺は、ハッとして我に返る。


「ああ、可愛いよ」


ストレートの黒髪を軽く巻いて薄くメイクをした美乃は、頬を赤らめながら照れ笑いをしていた。
思わずキスしたくなったけれど、信二と広瀬がいるから仕方なく諦める。


「じゃあ、行くか」


信二の言葉に頷き、俺たちはナースステーションで内田さんに声を掛けてから駐車場に向かった。