美乃と出会った時、彼女はまだ二十歳だった。
「別に勉強は好きじゃなかったから、ラッキーかな」
美乃は笑顔でそう言っていたけれど、それを自ら望んだわけじゃない。
そうするしかなかったんだ。
俺も勉強は嫌いだったけれど、学校は楽しかったし、友達とバカ騒ぎするのは好きだった。
高校生なんて、一番楽しい時期なのにな……。
いたたまれないような気持ちになっていると、彼女がムッとしたように眉を寄せた。
「もう! いっちゃん! 同情は禁止だってば!」
“同情”と“マイナス思考”は、美乃に禁止されていること。
“マイナス思考”は身内や親しい人間だけだけれど、“同情”は美乃の周りの人間には暗黙のルールだった。
「同情とマイナス思考は禁止なの! 暗くなると、運が落ちるじゃない!」
美乃の口癖だったそれは、もしかしたら彼女の精一杯の強がりだったのかもしれない。
美乃は体調のいい時だけ外出を許可されていたものの、それには必ず付き添いが必要だった。
だいたいは二〜三時間だけで、体調が悪い日が続くと1ヶ月以上も許可が出ないことがあったけれど、そんな時でも彼女はいつも笑っていた。
「別に勉強は好きじゃなかったから、ラッキーかな」
美乃は笑顔でそう言っていたけれど、それを自ら望んだわけじゃない。
そうするしかなかったんだ。
俺も勉強は嫌いだったけれど、学校は楽しかったし、友達とバカ騒ぎするのは好きだった。
高校生なんて、一番楽しい時期なのにな……。
いたたまれないような気持ちになっていると、彼女がムッとしたように眉を寄せた。
「もう! いっちゃん! 同情は禁止だってば!」
“同情”と“マイナス思考”は、美乃に禁止されていること。
“マイナス思考”は身内や親しい人間だけだけれど、“同情”は美乃の周りの人間には暗黙のルールだった。
「同情とマイナス思考は禁止なの! 暗くなると、運が落ちるじゃない!」
美乃の口癖だったそれは、もしかしたら彼女の精一杯の強がりだったのかもしれない。
美乃は体調のいい時だけ外出を許可されていたものの、それには必ず付き添いが必要だった。
だいたいは二〜三時間だけで、体調が悪い日が続くと1ヶ月以上も許可が出ないことがあったけれど、そんな時でも彼女はいつも笑っていた。