帰宅する前に、近所のスーパーに寄った。


「さっきね、ちょっとジュエリーショップ見たり、カフェでケーキ買おうか悩んだりしてたんだ」


美乃は映画館から戻ってくる時に、色々と物色していたらしい。


「そっか。心配だったけど、久しぶりの外出だもんな」

「外泊だよ!」

「はいはい。でも、ケーキは買わなくて正解だったよ」

「どうして?」

「俺がちゃんと予約して買っておいたから。あとで届くよ!」

「本当に⁉」

「まぁ、あのカフェのケーキじゃないけど……。雑誌に載ってた店のケーキだから」

「うん! ありがとう!」

「どういたしまして! それより、夜はなにが食べたい?」

「なんでもいい!」


満面に笑みを浮かべた彼女が、俺の腕にしがみついた。
一番困る返答に苦笑を漏らしながらも買い物を済ませ、家に向かった。


「うわぁ〜! 結構綺麗だし、広いんだね!」

「そうか? まぁ必死に片付けたけどさ」

「見られたくない物でもあったの?」

「いっぱいあるな〜。……特にエロ本とか」

「もうっ! 本当にエロ親父なんだから!」


俺たちは顔を見合わせて、ケラケラと笑った。


「あっ、ウェディングドレスの写真だ! ちゃんと飾ってるんだね!」

「当たり前だろ!」


キッチンに買って来た食材を並べると、美乃がやって来た。


「私も手伝うよ!」

「いいから、その辺に座ってろ」

「なにかしたいの!」

「美乃って、料理できるのか?」

「できない……です……」


彼女はポツリと答え、膨れっ面をして拗ねた。


「わかったよ! じゃあ、野菜の皮を剥いて、適当に切って」

「わかった!」


腕捲りをした美乃が、嬉しそうに野菜を取った。
そして、彼女は楽しそうにクリスマスソングを歌いながら、野菜の皮を剥き始めた。