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翌日、朝一番にあの店に連絡をし、撮影の予約を入れた。
みんなからは『できるだけ早くしてほしい』と、昨日の帰りに言われていた。


言うまでもなく、美乃の体調が悪化しているからだろう。
俺は一番早く空いていた明後日に予約を入れ、信二にも電話で伝えた。


「悪いな……。急だけど、大丈夫か?」

『俺は仕事抜けて行くし、親父も半休取るみたいだから大丈夫だ! こっちこそ悪いな』

「おじさんたちにはお前から伝えてくれるか?」

『ああ』


俺は電話を切ったあと、マリッジリングを買うためにジュエリーショップに行った。
あまりにも突然だったからいい物は買えないけれど、それでもちゃんと用意したかった。


エンゲージリングを買った時にアドバイスをくれた店員と相談しながらリングを選び、あの淡いピンクのリボンでラッピングして貰った。
そして、そのまま病院に向かった。


「ウェディングドレスの撮影の予約が取れたぞ! 明後日だ」


「本当……? ありがとう、いっちゃん……」


病室に入ると同時に弾んだ声で告げたが、ベッドに横になる美乃を見て一瞬だけ体が強張った。
嬉しそうにしながらも声にはまったく力がなく、そんな彼女の頬に触れるとかなりの熱が伝わってきた。


「熱、いつからあるんだ?」

「昨日の夜からなの……。ウェディングドレス、着れるかな……」

「大丈夫に決まってるだろ。さっきそこで先生に会ったから、外出許可もらっといたからな。ちゃんと元気になれよ?」


不安そうにする美乃を少しでも元気付けたくて、場違いなくらいの明るい笑顔を見せる。
それから、氷枕を交換するためにナースステーションに行き、内田さんに彼女の様子を伝えた。