「で、まあ……どうですかっていうのを言いたかったんだけど……」

「いいんじゃないかしら」トシさんが言った。「わたしもそう思うよ」と茂さんが続く。

「まあ、創業者が言うならね。別に不満もないし」

「ただ待て。表の看板……」義雄が言った。

「そう、あれを作り直さねばならなくてね。だから義雄に話そうと思ったんだ」

「ほう……。まあ、難しいものじゃないけど」

「どう? ほっこり処こうのはな。食事処より柔らかく和やかな雰囲気にならないかな」

「わたしは賛成だよ」雅美が言った。

「まあ五対一じゃねえ……」義雄は苦笑した。「いいだろう、そろそろニスを塗ろうという頃だったし」

「なんかすみません、わたしが変なことを言ったばかりに……」

「いやいや、いいんだ。本当に難しい作業はないから」

「なにかお手伝いできること……はないですよね」

「大丈夫、その気持ちだけで充分だよ」ああでも、と義雄は呟いた。「なにかこういうのがいいんじゃないかみたいな形とかあるか?」

「形ですか……。今のってどんな形でしたっけ」

「普通に長方形なんだ」

「へえ。なら、そのままでいいんじゃないですか。あまりわたしの色に染めてしまうというのも恐れ多いですし……」

「そうか。じゃあ……」義雄が見ると、雅美は「任せてちょうだい」と自慢げに言った。「わたしだって料理くらいできるから」