「まず……」なにから言うべきかと考えたが、まあいいかと思考をやめた。

「僕がこうのはなの名前を変えたいって言ったら、どう思いますかね」

「名前を? 今更?」義雄が言った。

「いや、名前というか……食事処というのを」

「どうした、羊羹の件といい、こうのはなを甘味処にでもするのか? 別に構わないけど、そんなに――」

じゃなくて、と僕は義雄の言葉を遮った。

「店の雰囲気も提供するものも、今のままでいいんだ。ただ、食事処っていうのを、ほっこり処にしたいなと」

えっ、と薫子は声を発した。「本当ですか?」

「そっちの方がこうのはならしいとも思って」

「あの、このほっこりって、わたしが言い出したんです。恭太君と新しい料理を考えてる間に、デザートの方が色々と案が浮かんできたりして、どこか甘味処のようだとなったんです。そこでわたしが、食事処ではなくほっこり亭やほっこり堂なんかにするのはどうだと提案したんです。いえ、デザートのメニューが豊富だって食事処のままでなんら問題はないのですが、こうのはなの拘りが、あたたかな場所であるということのようだったので、つい提案してしまって……」

薫子賢いねと笑うと、薫子はどこがですかと苦笑した。