「失礼致します。大変お待たせ致しました、ご注文をお伺い致します」

「鶏そぼろ丼の、ご飯少なめってできますか?」

女性客の問いに、僕は「はい、可能でございます」と答える。

「お値段そのままになってしまいますが……」言いながら、ヘルシーメニューも需要がありそうだなと思った。

「ああ、全然大丈夫です。じゃあ、以上で」

「かしこまりました、少々お待ち下さいませ」失礼致しますと頭を下げると、ちょうど薫子が上がってきた。

「お待たせ致しました、布巾と、代わりのお飲み物でございます」

お召し物の汚れは――という薫子の声を聞きながら、僕は座敷を下りた。

若いというだけで優秀だなと思った。なにより習得が早い。時の流れは残酷だ――。


義雄に受注の内容を伝えると、「了解」という声とあとに「ちょうどよかった」とうどんの載ったお盆が差し出された。

どこだったかと思考を巡らせながら、これが衰えというものだろうかと腹の中にため息をついた。

「ああすみません、それわたしが受けたものです」薫子が小さく言った。「そうだっけ」と義雄は苦笑した。