失礼致します、ご注文をお伺い致します――。正座して言ったあと、首から上を見られることにはとうに慣れた。子供の頃にも、肌が白いだの黒目や髪の毛が茶色いだのと言われては同級生らに関心を抱かれていた。そんな者が一般的ではない眼帯を着用していては、気になるのもおかしなことではない。

「鶏そぼろ丼とキャベツの味噌汁、抹茶羊羹ですね。羊羹は食前と食後、どちらにお持ち致しましょうか」

女性客は少し悩んだ後、「料理と一緒で」と答えた。

「かしこまりました、少々お待ち下さいませ」

失礼致しますと頭を下げ、僕は立ち上がった。

注文の内容を伝えながら、釜飯の載ったお盆を取る。「鶏?」と問うと、義雄は「山菜」と答えた。同じ頃に注文の入っていた鶏の釜飯は少し前に雅美が運んだという。

「もう親子丼ができる」という義雄の声へ「了解」と返し、座敷へ向かう。