八月に入ってから数日が経った外では、太陽が室内とは違う世界を作ることに尽力していた。眩しさに痛む目元に手で影を作る。

「最高気温は三十五度――だっけ」

大きく吸い込んだ息を苦笑に変換して吐き出し、しばらくしてからゆっくりと手をおろした。


総合ディスカウントストアは歩いて十分ほどの場所にある。目的のトイレットペーパーとさきいかの他、自分用の飲み物を購入し、躊躇いながら自動ドアをくぐった。強い日差しに目が痛み、激暑には寒気に似たものを感じた。

自分は暑さよりも寒さの方が苦手だと言い聞かせ、スポーツドリンクを一口飲んでから歩き出した。

ディスカウントストアと家の間辺りの場所に公園がある。中では、歩けるようになって間もないような幼子が母親と思しき人物のそばで歩いていた。なんて愛らしい生き物なのだと思うと自然に頬が緩んだ。

その公園の隅には、曜日や時間を問わず少女がいる。年齢は十五歳から十六歳程度に見える。彼女は今日もいた。ふらりと立ち上がると、こちらへ向かってきた。目線は僕とは違う方へ向けられているように見える。

少女は水飲み台に抱きつくようにして水栓をひねった。しばらくの静止のあと、下で顔を洗った。濡れた顔を拭くでもなく、彼女はふらふらと定位置へ戻った。