畳の掃除のあと、僕はぬるま湯を落とす蛇口の下に容器を置いた。

「この容器は机の掃除用。ぬるま湯を入れて――」容器の三分の二ほど溜まったところで、僕は「これくらい」と言って水栓を閉めた。「ほう」と薫子が相槌を打つ。

「で、この洗剤を入れるの。ペンで中性って書いてあるやつ。これを――」入れながらこれくらいと言ったあとに「まあ、勘。目分量」と苦笑する。実際、過去に一度もまともに測ったことはないが問題は起こしていない。

「まあ怖かったらちょっとお湯足して。薄いのは問題ないから。で、お湯と洗剤混ぜたら、この辺にある布巾をこれで濡らして、かたく絞る」

「この付近にある布巾を使うんですね?」

「おお、うまいこと言うね。この辺にあるのは全部机を拭く用のものだから、どれでもいい」

「わかりました」

試しに絞ってみてと言うと、薫子は布巾を一枚液体に浸け、絞るのに手や腕が震えるほどの力を込めた。

「これくらいですか?」

差し出された布巾を触り、「いい感じ」と返す。薫子は微かに笑みを浮かべた。

「それで、もう一枚持って、机を拭きに行く」

「その一枚は濡らさなくていいんですか?」と言う薫子へ「うん」と頷く。

「これは乾拭き用だから。濡らした方で拭いたあと、乾拭きするの」

「畳も机も、どれも乾拭きするんですね」

「そうだね。じゃあ行こうか」

はい、と薫子は大きく頷いた。