「あのう……」薫子が小さく言った。

どうした、と僕は返した。

「恭太君……部屋では一人がいいですか?」

「えっと……なんで?」

「わたし……恭太君の部屋にいたいなって……。一人というのが怖くて……」

「ああ、そうなんだ。なら、僕の部屋でいいならいたらいいよ」

薫子は「本当ですか」と微かに表情をやわらげた。「すみません」と呟く。

「じゃあ、ベッドは恭太の部屋か?」義雄が言った。

「そうだね」

「変なことするなよ」と言う義雄へ瞬時に「は?」と返す。

「でも、そこの部屋の掃除もしておいて」雅美は空き部屋を顎で示した。「薫ちゃんの服を置いたり、更衣室としても必要でしょう」

「そうだな。じゃあまず――」

「義雄は部屋の掃除をお願い。わたしは洗濯機回しちゃう」

「じゃあ、僕達は部屋にいようか。ベッドの位置なんかも考えよう」僕が言うと、薫子は「はい」と頷いた。