「すごいお洒落とか拘りそうなのに」

「そんな全然」僕は苦笑した。

「その睡蓮の服も、なにかの拘りがあってのそれなんだと思ってましたし」

「いやいや。なんか、通販で七百円ちょっととかだったんだよ。それで全色買っただけ」

「いますよねえ、そういう安いものを高そうに見せる人。わたし自身は高いものさえ安く見せる気がします」

「そんなことないでしょう。今着てるそれ、千円ちょっとのはずだけどそうは見えないよ」

これなんかどう、と僕は薫子の体に服を合わせた。七分袖のカーキ色のブラウスのようなものだ。

「わたしこういう感じですか?」自分で自分に似合うものわかんないんですと薫子は苦笑した。

「なんでも似合いそうだよね。色はどういうのが好きなの?」

「濃い色、はっきりした色が好きです。赤紫とか、紺とか」

「ああ、赤紫似合いそう」

「本当ですか。嬉しいです」

あっ、と声が出た。「これはどう?」紅色のワンピースを薫子の体に合わせた。「袖もないしワンピースだけど、短パン穿いて半袖の上着羽織れば悪くなくない?」

「ああ、そうですね。なんか人様に選んでもらうのって楽しいですね。いっそ、何着か恭太君が選んで下さいよ」

「僕、服に拘りないんだよ?」

「わたしもありませんから」

「まあそうらしいけど……」本当に嫌なものなら言ってねと僕は苦笑した。