平日の日中ということもあり、服屋は随分空いていた。

「いくらでも欲しいもの持ってきな」雅美は入店してすぐ、薫子の肩を叩いた。「わたしもぷらぷら見てるから」と僕達のそばを去る。

「ちょっと」という薫子の戸惑いを含んだ呟きは、その背には聞こえないようだった。

「いいよ、いくらでも」僕が言った。

「でも……」

「大丈夫。本当にうち、出費より収入の方が多いんだ」

「いや、そういう自慢が聞きたいんじゃなくて……」

「薫子はどんな服が好きなの?」僕は言いながら歩き出した。

「ちょっと」と発し、薫子は小走りで僕の隣に付いた。

「で、どんな服が好きなの?」

「そうですねえ……。露出は少なめがいいです。あと、スカートとかワンピースよりもズボンが好きです。洋服ならなんでも合うので、よくジーンズを穿いてました」

「そうなんだ。あまり拘りはないんだね」

「そうですね。サイズさえ変わらなければ穴が空くまで着ます」

「ああ、そういうのすごいわかる」

「へええ」なんか意外ですと薫子は続けた。