「あのう……お店、本当にいいんですか?」薫子はシートベルトを着用しながら言った。

「いいのいいの。めったに臨時休業なんてしないから」義雄は運転席から明るく答えた。

「めったにしないからこそまずくないですか? 次のお休みで全然構わないんですよ?」

「大丈夫大丈夫。もう臨時休業の看板出しちゃったし。ではデッパツしますよっと」

「安全運転でね」と言う雅美へ、義雄は「勿の論」と返す。

「デッパツってなんですか?」と静かに問うてくる薫子へ、僕はシートベルトを着用しながら「出発だよ」と答えた。「標準語じゃないから気にしないで」と続ける。

「忘れ物はない?」義雄が言った。雅美が「ないない」と返す。「ある程度のものなら買えるし」

「それじゃあデッパツでーす」

義雄は車を動かしてすぐ、「まずガソリン入れていいかな」と苦笑した。

「しょうがないなあ」と返す雅美へ、彼は「給油の間にどこ先に行くか決めておいて」と告げる。