「パソコンはそれ、なんですか? 暗号みたいなのがいっぱい並んでますが」薫子はこちらへきながら言った。「そこからよく見えるね」と笑うと、彼女は「前から視力だけはいいんです」と複雑に笑った。

僕はパソコンの方を向き直った。

「これは、こうのはなのホームページみたいな。まあ公開はしないんだけどね」

薫子は僕の隣に座って画面を覗き込んだ。

「へえ。えっ、これがホームページなんですか?」

「の……まあ、そう。これが――」

僕はパソコンを操作し、画面にページを表示させた。藤色と茶色を基調とした、作務衣に似た図画だ。

「わあ、お洒落ですね」薫子は語尾に感嘆符を付けた。

「さっきの暗号みたいなのが、これを作ってるんですか?」

「そう。僕も詳しいわけじゃないから、あまり説明できないけど」

「詳しくないのにこんなの作れるんですか?」

「まあ……語学とか数学みたいな感じ。これはこういうものなんだと思ってしまえばそれなりに進めるような」

少しの静寂のあと、薫子は「へえ」と呟いた。「ちょっとわたしには例えが深すぎました」と苦笑する。

「きっと僕の説明が下手だったんだ」と同じように返した。