新しい眼帯に着け替え、その上に眼鏡を掛けた。パソコンを立ち上げ、見慣れた画面に打ち慣れた文字や記号を並べる。

ファイルには、公開もしていないこうのはなのホームページのようなものを多数保存している。もしも作るのならという感覚でホームページのようなものを作るのがここ数年の趣味だ。その前はタイピングゲームが好きだった。

半分ほど打ち込んだ頃に戸が開けられた。「ただいま戻りました」と薫子の声が続く。

「どうだった?」言いながら、僕は体ごと振り返った。

「わたしはよかったんですが、トシおばあちゃまが納得いかないようで。少し直すそうです」

そうか、と僕は笑った。トシさんらしいと思った。

「明日までには仕上げると仰ってました」

「そうか」

「なんか、素敵な方ですよね。もう九十代でしたっけ。わたしの数年前に亡くなった曾祖母よりもずっと長く生きてらっしゃるのに、あんなにしっかりしてる。わたしの曾祖母は八十四歳で亡くなったのですが、最後に何度か会った頃にはわたしのことをわかっているかどうかも不確かでした」

「……そう。病気かなにか?」

はい、と薫子は静かに頷いた。「小さい頃からよくかわいがってもらってたので、寂しかったです」こんな話しちゃってすみません、と薫子は苦笑した。