僕は左の胸元に黄色の睡蓮の花が描かれた白いティーシャツへ着替えたあと、左手首にブレスレットを着けた。細い四本の革が緩く編まれたそれは、二十歳の誕生日にトシさんがくれたものだ。

部屋を出ると、右前方の台所でフライパンを振る義雄が「おはよう、早いな」と白い歯を見せた。

「なに食べる? おれは野菜炒めなんだけど」

「どうしようかな、じゃあお茶漬け。温かいの」

義雄は「了解」と頷き、「雅美もそうかな」と呟いた。

僕は正面にある洗面台で、洗口液で口をゆすいだ。洗面台を軽く流し、水栓のそばにあるティッシュで手と口元を拭いて丸め、洗面台の下にあるごみ箱へ放った。

僕が洗面台の前を離れると、左側のトイレから雅美が出てきた。「おはよう」と言う彼女へ「おはよう」と返す。

「義雄、わたしお茶漬け」雅美は手を洗いながら言った。「温かいの?」と問う義雄へ「冷たいの」と答える。手を拭いたティッシュをごみ箱へ放り、「行きましょ行きましょ」と雅美は僕の肩を叩いた。