僕は咳払いをした。

「トシさん?」

「なにが?」

「雅美、彼女のことある程度想像がついてそう」

「ああ、そうだよ。おばあちゃん、恭太が公園にいつもいる女の子のことを話してたことを教えてくれたの」

「そうか。まあ、義雄から返信がきたときにそうかなとは思ったけど」

「鋭いね」

普通だと思うけどと僕は苦笑した。

「ところで、彼女随分とかわいいわね。あんな子がどうしたのかしらね」

「さあ。僕もなにも知らない。別に知る必要もないし」

「まあ……」

しばらくして、薫子は黒のティーシャツに黒のジャージという姿で出てきた。

「ちょっと服大きかったね」と苦笑する雅美へ、彼女は「大丈夫です」と返す。

「それより、その……本当にいいんですか?」

「だめならここにいないよ。それより、わたしは雅美。雅に美しいって書くんだけど、名前負けしてるとは思うだけにしてね。あなたのことはなんて呼べばいい?」

「あ、わたし植島薫子と申します。植物の植に島国の島、草冠の薫に子供の子と書きます。なんでも、薫子とでも呼んで下さい」

「薫子ちゃんか……じゃあ、薫ちゃんに決定ね」

「はい」

「わたしのことも好きに呼んで。おばさんはちょっと悲しいけど」

「では、雅美さん……で」

「あらまあ」本当にかわいい子ね、と雅美は満足げに笑った。