こうのはなまで五分くらい歩くけど大丈夫?――僕の問いに、少女は静かに頷いた。

「体調悪くない?」

「大丈夫です」

公園の近くにあるコンビニで、少女に食物アレルギーの有無を確認した後、チューブ型の氷菓を購入した。

「好き? こういう味」僕は袋から氷菓を取り出して問うた。

「……大好きです」

「よかったら」と差し出すと、少女は「でも」と悲しげな表情を見せた。

「言ったでしょう? 僕、こう見えて金はあるんだ」

僕が口角を上げると、少女はふっと苦笑して氷菓を受け取った。歩き出した隣で開封されたのを確認して手を出す。すみませんという静かな声と共に袋が載せられた。

「先っぽあげます」少女は言いながら、チューブの上部を差し出した。

「父が言ってたんです、このアイスはここが一番美味なんだぞって」

「……信じてたの?」少量の氷菓が詰まったチューブの上部を受け取り、僕は言った。

「まさか」と少女は噴き出す。

「よかったよ」僕は真剣に返して氷菓の詰まっている部分を口に入れ、端を噛んで引き出した。舌に転がった小さな冷たい塊は懐かしい味がした。