「それで、どう? 僕にできることはある?」

ありません、と少女は俯いた。

「わたし、もう迷惑掛けたくないんです。迷惑を掛けないためにここにいるのに……」

「迷惑――か。ところで君、いつからここにいるの?」

「七月って何日までありましたっけ」

「三十一かな。それから?」

少女はたぶんと曖昧に頷いた。

「もう十日近くいるのか」

「今日十日なんですか?」

「うん。十一……かもしれないけど」

「そうですか……」わたし数日前に年取ってましたと少女は笑った。

「誕生日、今月なの?」

「八月八日です。ハハッてね。この頃の人生に笑える要素はないんですが」

「そうか。そういえば、君十日近くもここにいるんでしょう? 食事なんかはどうしてるの?」

「とりあえず家を出るときに財布は持ってきたので、その中身があるうちは適当なものを買って食べてました」

「この頃は?」

「まともに食べてません」

「そうか」一呼吸置いて、僕は「ねえ」と続けた。「うちにこない?」

少女は複雑な表情で僕を見た。

「もちろん、嫌ならそれで構わない。強制するつもりはないから。だけど君、このままどうするの?」

「どう……ですか。どうするんでしょう……」

「このままでは体が危ないよ」僕は「水はあそこにあるとしても」と水飲み場へ目をやり、すぐに少女へ視線を戻した。「食べ物はそうそうない」