自室となった部屋は六畳の和室だった。初めてそこで今のように目を覚ましたのは五歳の頃だったと記憶している。

部屋には今、箪笥、正方形の座卓、卓上鏡、ノートパソコン、壁掛け時計、エアコン、大型の衣装ケース程度の箱がある。いずれも木製のもので、どこからともなく高級感を放っている。

エアコンには木製のカバーがつけられており、それは外さなくてもエアコンの使用が可能となっている。父親の義雄が「他は木製なのに違和感があるだろう」とつけてくれたのだ。ノートパソコンにも、周りのものに合わせて木目調のカバーをつけた。


僕は座卓の前に座った。卓上鏡に掛けてある布を取って適当な場所に放る。慣れた作業のあとに眼帯の紐を頭の後ろで結んだ。眼帯はおよそ十年前から体の一部のようなものだ。

淡い橙色の絹と茶色の紐は、曾祖母のトシさんが選んでくれた。彼女は当時、「恭ちゃんのような漫画に出てくるような色男はこういうのも似合うわよ」と楽しそうに語った。形を作ってくれたのは母親の雅美だ。

僕はそれまで使っていた医療用のものでいいと思っていたのだが、穏やかな雰囲気のもとでああでもないこうでもないと言い合う二人を見ていたらそうも言えなくなった。