「どうしてこんなところにいるの?」

「……パーカー暑くないんですか」少女はぼそりと言った。

「ああ、僕日焼けに弱いんだ」

「へえ……」

「君、家は? この頃毎日ここにいるようだけど」

少女は静かに目を逸らした。

「家は、ありません」

「ない?」

「いや、家……というか……。ていうか、あなた誰ですか」

「通りすがりの――」

そうじゃなくて、と少女は僕の言葉を遮った。僕は小さく苦笑した。

「たけくらきょうた。竹林の竹に小倉あんの倉でたけくら、共同の共に下心と書く恭に太いできょうた」

「……わたしになんの用ですか? この公園の人というわけでもなさそうですし」

「もしも君が困っているのなら、助けたいと思っているだけだよ」

「別に困ってません」

「それなら構わないけど――」

僕が言葉を続ける前に、少女は複雑な光を持たせた目を向けた。

「君はどうしてここ最近ずっとここにいるの?」

「……帰れないんです、家に」

「忘れたの?」

「記憶は大丈夫です。ただ、その……」

お兄さん新手の誘拐犯とかじゃないですよねと少女は続けた。違うよ、と僕は苦笑する。