少女は目を閉じて眉を寄せ、ティーシャツの淡い黄色を所々濃くして横になっていた。僕はそばにしゃがみ、上に向いている手首の内側に触れた。生きてると声に出す代わりに小さく息を吐き出した。

少しして、少女は微かに目を開けた。

「大丈夫?」僕は言った。

少女はなにも言わず、ゆっくりと体を起こした。健康的――というのも少し違うほどに日焼けした華奢な腕からぽろぽろと砂が落ちる。僕はハンカチをペットボトルの水滴で湿らせ、彼女の腕を拭いた。「いいです」と少女は腕を払う。

僕は自動販売機で購入したスポーツドリンクを差し出した。「飲む?」

「……誰?」

「通りすがりの黒パーカー男」

そのまんま、と少女は力なく苦笑した。静かに表情を戻し、砂埃に汚れた濃いピンク色のショルダーバッグを漁る。少ししてから、「要りません」と呟いた。

「気にしないで。僕、こう見えて金はあるんだ」

要りませんと言う少女へ毒は入ってないよと苦笑する。少女は躊躇いがちにペットボトルを受け取った。

「君、ずっとここにいるね」僕は言った。

少女はペットボトルの細かい水滴を茶色く染め、ぴくりと体を震わせた。