「茂さんのパイナップル、実ったみたいですね」

「そうなのそうなの。ちゃんとできてるのよ」雅美が嬉しそうに言った。新しい爪楊枝で切れたパイナップルをいくつか紙皿へ載せて差し出してくる。

「食べてみて」と茂さんが愛らしい笑顔で言う。

僕は雅美から紙皿と爪楊枝を受け取り、座布団へ座った。「いただきます」と一切れを口に入れる。味や食感、なにもかも店で買うものと大差なかった。むしろ買ってきたのだと言われても疑わない程だった。

「おいしいです、すごく。茂さんすごい」

「そうかいそうかい、よかったよ」

「しげさん、頑張っていたものね」トシさんが隣から穏やかに言うと、茂さんは「そうだよ」と嬉しそうに笑った。

「恭太君においしいと言ってもらいたくてね」

「そうなんですか? 僕なんでも言っちゃいますよ」

僕が笑い返すと、茂さんは「かわいいねえ」とトシさんと声を揃えた。

「二人とも孫より曾孫の方がかわいいからね」と雅美は笑う。

殆ど無意識に、「幸せだなあ」と口角が上がった。