応募部門：フリーテーマ

恭太は二歳程度の頃に両親に遺棄されていたところを保護され、養護施設で過ごしていた。当時自分の名前を答えなかった彼は施設の者に椿原という名字と共に恭太という名を与えられる。

五歳のときに竹倉夫妻に引き取られ、以来深い愛に恵まれる。夫妻が彼を引き取った動機は不妊だった。

条件を満たして正式に竹倉家の人間になって程なくして、十五歳の衛が家にやってくる。家出した不良少年だった。恭太は彼をまも兄と呼んで慕った。

衛は二十歳になると夢の実現のため竹倉家を出た。

恭太が薫子に声を掛けたのは二十二の夏だった。家には帰れないと言う彼女を放置するわけにもいかず、家に連れた。後に彼女がいじめを原因に高校を中退し、それを理由に家を追い出されたことを知る。

薫子も二十歳になると竹倉家を出た。かつて自分を幸に恵まれている故に他人の苦悩を理解できない無力な人間だと思っていた恭太だったが、薫子と別れる頃には、自分には人の苦悩を理解する程大層なことはできないが、人を愛する程度のことならできると気づく。