そして経営が安定した今、ここにきたわけさ――。まも兄は自慢げに締めくくった。

「この間、反発で出た実家にも戻ったっす」甘味処のこと話したらこんな息子いないぞって笑われましたとまも兄は笑った。

「甘味処の名前は平仮名でまもるっす。まさから取って平仮名でみやびも迷ったんすけど、高そうかなって。こうのはなの真似して安く提供したかったんで」

義雄さん、と薫子が言い切る前に彼はボックスティッシュを出した。薫子がずるずると鼻をかむ。

「まも兄すごいです」

薫子の声に、もっと言ってとまも兄は笑う。

「どうっすかよっしー。おれすごくないすか。上等じゃないすか」

「よし、今度お前の本気を奢れ」

「おっ、いいっすよ。美味に泣かせてやりますよ。和菓子のおっさんも京都の人達もすごい人なんで。おれもそこそこな奴になってるっすよ」

「ほう、そうか。よし、明日は臨時休業だ」

三日くらい待とうよと僕が苦笑すると、無理だと短く返ってきた。