竹倉夫妻に拾われたのは十五のときだった。反抗期と思春期が重なったおれはひどく荒れ、非道徳的な生活を送っていた。親に反抗して家を飛び出し、近辺を徘徊していたところを夫妻に拾われたのだが、家出のきっかけは、今では自嘲できる過去の一つだ。隠し持っていた煙草の存在を両親に知られたのだ。

当時はまだ、未成年でも周りの人間に気づかれなければ自販機で煙草の購入が可能だった。それが不可能になった頃にはおれは成人していた。尤も、その頃には煙草の存在さえ忘れていたが。

竹倉家での居候が始まっても、なにも起こらなかった。両親から連絡があるわけでも、誰かが保護にくるわけでもなかった。彼らなりの愛情表現のようなものだったのだろう。自らの過ちには自らで方を付けろと言われていたかのように今は思う。