義雄達は声を揃えて彼の名を呼んだ。

「まさか本当に会いにくるとはなあ。もう十年以上経ってるぞ」

「十年以上掛かっちゃったんす。こんな予定じゃなかったんすけど、上達遅かったすかね」

「お前今なにしてるんだ?」

「ていうか」まも兄はこちらを向き直った。この美人誰っすかと指を揃えて薫子を示す。

薫子は小さく声を発した。「えっと、ここでアルバイトしてる植島薫子と申します」

僕の妹と言うと、まも兄はすぐに理解したようだった。じゃあおれの妹でもあるなと笑う。

「それでまもる。お前は今なにしてるんだ? ちゃんと生活できてるのか? 仕事は見つかったのか?」

「心配性っすねえ、よっしーさん。てかトッシーさん達は……?」

「上にいる」雅美が言った。「まじすか」とまも兄は声を上げる。「いやあ、もう会えないかと思ったっすよ」

「失礼しちゃうわね、おばあちゃん達は元気であるのが取り柄なの」雅美は堂々と言った。雅美もまも兄と大差ないよと腹の中に呟いた。