居間へ戻ると、「おかえり」と雅美が振り向いた。「間に合ったんだ?」

「うん」

「恭ちゃんったら、外套も着ずにきてくれたの」びっくりしちゃった、とトシさんは笑う。

「間に合ってよかったです」

大福、と僕は雅美に袋を渡した。

「みんな三つずつ買ってきたの」

「そんなに?」雅美は袋の中を覗いた。「まあ、それくらいが嬉しいけど」

「ゆっくり食べましょう。しげさんは?」

「おじいちゃんなら、まだ外でなんかやってるよ」

「そう。では、なにか持って行ってあげましょうかね」

トシさんが居間を出ると、「冷蔵庫にスポーツドリンクが入ってます」と義雄が後を追った。

僕は座卓へ目をやった。「いか、いなくなったね」

「義雄が食べちゃった。残しておいてあげようって言ったんだけどね」

「まあ構わないよ」僕は小さく笑った。

台所から「やりますよ」と幼子を相手にしているような義雄の声が聞こえてくる。

「おばあちゃんの動きってそんなに危なっかしく見えるかな」雅美はぽつりと言った。

「危なっかしいというより、なんか助けてあげたくなっちゃうんだよね、トシさんって。かわいいからかな」

「まあ」かわいいとは思うけど、と雅美は呟いた。