生まれた家は至極平凡だった。会社勤めの両親の元だ。二人は仕事が好きだった。働くことをを誇りに思っていた。しかし家族を蔑ろにすることはなかった。むしろわたしは大切にされていたように思う。

自分が人と良好な関係を築くことが苦手であることに気づいたのは小学校中学年の頃だった。その頃に何らかの変化が起きたわけではない。それまでもその頃も、同じような状況にあった。なにを機にか己の現状を客観視して気がついた。友達と呼べる友達がいなかったのだ。それがどうというわけではないが、その事実に苦笑した。

人と良好な関係を築くのが困難であった理由はやがてわかった。わたしは相手に踏み込みすぎる傾向にあるようだった。仲のいい人とは一緒にいたいと考える部分も相まって、小学校五年生の頃からうざいだのしつこいだのと言われるようになった。

仲のいい相手とも適当な距離を保っておきたいと考える人もいるのだ。そこを考慮せずに自分の望ましいように接していればそう言われるのも当然かもしれなかった。