「あのう……」薫子は躊躇いがちに言った。「右目?」と返すと、彼女は複雑な表情を浮かべた。

「今はなんの問題もないよ。義眼の大きさも決まってるし、痒みや違和感もない」

「そうですか……。あの」

僕は小さく笑った。「いいよ」と言うと、薫子はぴくりと目を大きくして真面目な表情を浮かべた。

眼帯の紐を解き、ゆっくりと本体を離した。薫子はどこか悲しい笑みを浮かべて「非礼に当たったらごめんなさい」と言う。

「恭太君、やっぱりかっこいいです」

「照れるな」と苦笑し、僕は眼帯を着け直した。

「眼帯、わたしはなくても問題ないように思います」

「そうかな。でももう、あるのが普通になっちゃってるから」

「その眼帯はどういうところにあるんですか?」

「雅美が作ってる。中学卒業してすぐ、トシさんが色と素材選んでくれて」

「そうなんですか。さすがトシおばあちゃまですね。めっちゃ良さげな素材」

絹だねと僕は苦笑する。