トシさんは十五個の大福を購入した。合計金額
およそ一万円だった。

店を出ると、強い日差しが目や額に痛みを誘発した。僕は空いた左手の甲を額に当てた。「今日も暑いですね」

「そうだね。倒れてしまっては大福も食べられないわ」早く帰りましょうトシさんは笑った。

なごみは、不思議な少女のいる公園の道路を挟んで斜め右前方にある。僕は公園のそばで足を止めた。無意識だった。「どうした?」とトシさんも隣で足を止める。

「いえ……この公園に、僕が見るときいつもいる女の子がいるんです。中高生くらいに見えるんですが、曜日を問わずいるので少し気になっているんです。学生なら今は夏休みなんでしょうけど、それにしても頻繁にいるので」

「へえ、そう。今日は?」

「どうでしょう……」言いながら視線を走らせると、いつもの場所に少女の姿を見つけた。「います」と続ける。

「いつもいる女の子――と言うようでは、話したことはないのかしら?」

「ええ。気にはなっているんですが」

「そう。それなら、いつか話してみるといいわ。人に触れると心が豊かになるもの」

「そうですね。もしかしたら、僕にもなにかできることがあるかもしれない」

「恭ちゃんは人のためになりたいの?」

「はい。僕は――」僕は続きを飲み込んだ。代わりに「行きましょう」と続けた。「この暑さでは大福が悪くなります」