薫子が出て行く夢を見た。口論や揉め事があったわけではない。時が経ち、次に住む場所も見つかってのそれだった。
僕はため息をついた。彼女が誕生日を迎えたらこれかと思った。薫子が出て行くのは悲しいことではない。彼女本人が望んでいることだ。
ベッドの上に目をやると、薫子が自身の右目に触れていた。
「どうした?」と声を掛けると、彼女はぴくりと体を震わせて「おはようございます」と笑顔を見せた。
「おはよう。目、痛いの?」僕は上体を起こしながら言った。
「いえ……。その、なんかちょっと痒くて」花粉症ですかねと苦笑する薫子へ、どの季節にもあるようだからねと返す。
「辛かったら言ってね。薬局は近くにあるから」
「いえ、本当に大丈夫です。なんかすみません」
「ううん。目はくれぐれも大切にね」
複雑な表情を浮かべる薫子に笑い掛け、顔を洗ってくると伝えて部屋を出た。
僕はため息をついた。彼女が誕生日を迎えたらこれかと思った。薫子が出て行くのは悲しいことではない。彼女本人が望んでいることだ。
ベッドの上に目をやると、薫子が自身の右目に触れていた。
「どうした?」と声を掛けると、彼女はぴくりと体を震わせて「おはようございます」と笑顔を見せた。
「おはよう。目、痛いの?」僕は上体を起こしながら言った。
「いえ……。その、なんかちょっと痒くて」花粉症ですかねと苦笑する薫子へ、どの季節にもあるようだからねと返す。
「辛かったら言ってね。薬局は近くにあるから」
「いえ、本当に大丈夫です。なんかすみません」
「ううん。目はくれぐれも大切にね」
複雑な表情を浮かべる薫子に笑い掛け、顔を洗ってくると伝えて部屋を出た。